エロゲ——アダルトゲームという言葉に抵抗感を持つ人は、まだ少なくありません。けれど、創作を志す者の中には「人生で最も影響を受けた作品はエロゲだった」と語る人が意外なほど多く存在します。
イラストレーター、小説家、脚本家、さらにはゲームクリエイターや漫画家にまで──なぜエロゲはここまで多くの表現者の心を捉えるのでしょうか? 本記事ではその“創作的な魅力”に迫ります。
エロゲは、他のゲームジャンルと異なり、テキストが主役です。数十万文字におよぶ長文シナリオが展開され、プレイヤーは「読むゲーム」として物語と対峙します。
日常会話の積み重ね、独白、詩的なモノローグ、そしてクライマックスの名台詞──すべてがキャラクターを“生きている存在”に変える力を持っています。物語の書き手にとって、ここはまさに「言葉の鍛錬場」です。
グラフィックの世界観設計、繊細な表情差分、場面に合わせて流れるBGMや効果音。エロゲは「静的な物語」にダイナミクスを与えるため、極限まで演出を工夫します。
映画のようでありながら、舞台演劇のようでもある。制約の中で最大限の感情を表現する方法論が詰まっており、絵描き・音楽家・演出家すべてにとって刺激的な素材となるのです。
性、死、孤独、倫理、生きる意味──これらのテーマを真正面から描ける場所は、創作の中でも限られています。エロゲは「18禁」であるからこそ、そうしたギリギリのテーマに踏み込めるジャンルです。
現実では語られにくい欲望や弱さを肯定しながら、「それでも生きていく人間」を描く。それは表現者にとって非常に深いテーマであり、創作の糧になります。
創作とは「なぜこのキャラはこう行動したのか?」という問いの連続でもあります。エロゲは選択肢によって物語が分岐する構造を持ち、それぞれの結果に「因果」と「感情的な納得」を与えなければ成立しません。
このシステムは、物語構造を研究する者にとって宝の山です。ルートによって変わるキャラの成長、別れの意味、ハッピーエンドとバッドエンドの対比──すべてが物語作りのヒントになります。
エロゲの名作の多くは、プレイ後に長く心に残ります。名もなきモブの一言、音楽のワンフレーズ、選ばなかった選択肢。その余韻は、創作の「情感」を磨くトレーニングにもなります。
忘れられないものを生むには、まず“忘れられない体験”を知る必要がある。エロゲには、それだけの力があります。
エロゲは単なる娯楽ではなく、言葉と絵と音と感情が交差する総合表現です。そこには創作における“本質”が詰まっており、だからこそ多くの作り手が魅了され、影響を受け続けているのです。
もしあなたが何かを作りたいと思っているなら、一度、真剣にエロゲと向き合ってみてください。きっと、あなた自身の物語を形にするヒントがそこにあるはずです。
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